メールマガジンアーカイブ(2024年5月)

※本記事は,2024年5月に,顧問先様へ配信したメールマガジンのアーカイブです。

皆様

万和法律事務所の弁護士福本・中島・竹田です。

今回のメールマガジンでは、名誉棄損に関するニュースについてご紹介します。

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 ◆アミューズ、SNSユーザーに注意喚起

5月22日、公式X(旧Twitter)上で滝沢ガレソ氏による、星野を連想させる憶測で書かれた投稿がネット上で拡散された。これを受け、同社法務部の公式Xでは午前3時頃に「星野源に関してそのような事実は一切ありません。また、当社が記事をもみ消したという事実も一切ありません」と声明を発表し、内容を否定した。


そして同日午後4時頃、新たな声明として「当社とは無関係の名誉毀損事件についてですが、東京高等裁判所が、2022年11月10日、名誉毀損ツイートをリツイート(現在の「リポスト」)することがその事案においては違法であるとの判決を出しました」と切り出し「SNSのご利用に際しては、名誉毀損ツイートをリツイート(現在の「リポスト」)することにより法的責任が発生することもあるということについてもご認識いただく必要があるといえます」と投稿者だけではなく、SNSユーザーに対して名誉毀損ポスト(ツイート)を拡散することへの注意喚起を行った。

また「名誉毀損になりえることとは別に、SNSへの書込みやDMで誹謗中傷を繰り返す行為は迷惑防止条例で定められる『つきまとい行為』に該当する場合もあります。この迷惑防止条例違反は、罰則もある犯罪行為です」と訴えた。

なお、星野は自身のInstagramストーリーズで「上記の投稿のようにいまSNSやインターネット上などで噂されている件に事実は一切ありません。事実無根です」と発信している。(modelpress編集部)

(令和6年5月23日 モデルプレスより引用)

———————————-引用ここまで————————————

今回問題となった投稿には、実名の記載がありませんでした。このような場合にも、名誉棄損に該当するのでしょうか。

これは名誉棄損のおける「同定可能性」の問題です。名誉棄損行為は、対象者が特定されている必要があります。実名の記載が無い匿名の場合や、仮名(ハンドルネーム)が使用されている場合、名誉棄損行為の対象者が「特定」されていると言えるかが問題となります。

この点、実務では「一般読者基準」説が採用されており、一般読者の普通の注意と読み方に照らして当該記事を解釈すると特定の人物を指すと受け止められるようなものであれば、当該特定人に対する名誉棄損が成立するとされています。したがって、実名の記載が無くとも、名誉棄損は成立し得ることとなります。

そして本件で問題となっている記事では、「超有名女優とドラマ共演して電撃結婚した男性歌手」「結婚後に・・・番組共演した某NHKアナ」という記載がされており、このような記載によって、「一般読者の普通の注意と読み方に照らして当該記事を解釈すると特定の人物を指すと受け止められる」かどうかが争点となります。

以上のとおり、「実名を記載さえしなければ名誉棄損にならない」という考えは誤りとなります。

昨今ではネットにおける名誉棄損が多数問題となっており、企業が名誉棄損の被害に遭うことや、会社の従業員が名誉棄損のトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。

名誉棄損についてお困りのことがございましたら、遠慮なくご相談いただけますと幸いです。

(文責:弁護士 竹田 仁)

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